当院では、術前と術後に、口腔内の写真を撮らせていただきます。
それは、どんな説明よりも、実際に写真を見ていただくほうが、患者様にとって現状を把握していただきやすいと思うからです。
また、患者様と情報を共有できる、治療方針が立てやすくなる、お口の変遷を知ることができる、など様々なメリットがあります。ここでは、これから治療を検討されている方のために、代表的な症例を毎月更新していきます。
入れ歯には、保険適応でつくれる物と、自費でしかつくれない物があります。
保険適応の入れ歯は、素材はプラスチックで、最大の特長は費用を抑えられることです。
一方、自費の入れ歯は、違和感の少ない金属やシリコンなどの素材を選ぶことができますが、費用がかかります。
保険適応の入れ歯 | 自費の入れ歯 |
---|---|
われやすい | われにくい |
厚みがある | 薄く作成できる |
熱の伝わりがにぶい | 熱の感覚がわかる |
金額を抑えられる | 金額がたかい |
保険適応の入れ歯は素材の特質上割れやすく、使用状況によっては同じ場所が何度も割れてしまいます。
下の写真は、一度割れ、修理したところがまた割れてしまった症例です。
再度修理しましたが、また割れる可能性は高いです。
厚みの差を測定すると、保険適応の入れ歯では約3mm、自費の入れ歯(金属床)では約1mmでした。
たった2mm差と思われるかもしれませんが、お口の中はとてもデリケートなため、その差で感じる違和感は非常に大きく違います。
保険適応と自費の差は素材だけではなく、入れ歯を作製する工程にも違いがあります。
自費診療では精度の高い入れ歯を作るための型取りや設計が出来ますので、快適で壊れにくい、より優れた入れ歯を作ることが出来ます。
CAD/CAM冠とは、コンピューターで歯の形を読み込み、白い素材(ハイブリッドレジン)のブロックを削りだして作った歯(冠)の事です。
従来、保険診療では1・2・3番目の歯までしか白い歯が入りませんでしたが、2014年4月から、小臼歯(真ん中の歯から数えて4番目と5番目の歯)にCAD/CAM冠による白い歯が保険診療で入るようになりました。
CAD/CAM冠を入れるには下記の様な条件があります。
CAD/CAM冠の条件
- 小臼歯(4番、5番の歯)である
- 上下のスペースが十分にあり、単冠で装着できる
- 根が残根でなく、単冠で装着できる
- 隣の歯と連結する必要がない
ここではCAD/CAM冠に出来た症例と出来なかった症例をご紹介します。
※冠は「クラウン」や「被せ物」と同じ意味です。
右上の4番の歯。
削ったあとに残っている歯もあり、単冠で装着が可能。更に上下にスペースが十分確保できているので、被せ物をCAD/CAM冠に出来る条件がすべてそろっています。
右上の5番の歯。
歯の根だけが残っている残根の状態。
残っている歯が少なく単冠での装着が困難なので、4番の被せ物をいったん除去し、連結冠(フルメタルクラウン)を装着しました。
右上の5番の歯。
単冠で装着は可能だが、上下のスペースが十分ではない状態。
歯に被せ物がはずれにくいよう溝をつくり形成したあと、フルメタルクラウンを装着しました。
※スペースが少ない場合、はずれやすくなるのでCAD/CAM冠は適しません。
右下5番の歯。
奥歯を抜歯した後、5番の歯には部分入れ歯をかける予定のため、4番の歯と一緒に連結冠(フルメタルクラウン)を装着しました。
※金属に比べると強度が劣るため、入れ歯のばねをかける歯にCAD/CAM冠は適しません。
前歯の虫歯がひどくなってしまい、神経の治療をして被せ物(クラウン)をする場合には、被せ物(クラウン)と土台(コア)の素材に、保険適応の物と適応外(自費)の物をお選びいただけます。
保険適応の物は費用を抑えることができ、自費の物は見た目が美しく、長期間綺麗な状態を保つ事が出来ます。
初診:40歳女性。前歯の色が気になり来院。
処置:コアをファイバーに、クラウンをセラミックに変え修復。
以前より透明度が増し、より自然な色になりました。
費用:2本で12万円(自費診療)
- ファイバーコア
- 歯に近い硬さなので残っている歯根が割れにくく、金属ではないので黒ずみの原因である金属成分が溶け出さないため、歯や歯茎の変色を防ぐことができます。
- セラミッククラウン
- 素材にセラミック(陶器)を使用しており、保険適用の物よりも透明感のある自然な歯を再現できます。また、長期間変色せず、きれいな状態が維持できます。
初診:40歳男性。前歯が離脱で来院。
処置:既存の状態では今後も外れやすいため反対側を除去し、金属コアを入れ、被せ物を入れました。
費用:2本で約1万2千円(保険診療)
- 金属コア
- 金属で出来ているので非常に硬く、残っている歯根が割れる危険性があり、金属イオンが溶け出し、歯や歯茎が黒くなる可能性があります。
- 硬質レジン前装冠
- 外から見える部分に白いレジン(プラスチック)を使い、中身は金属で出来た被せ物で、透明感はあまり無く、時間の経過につれ歯や歯茎が変色する可能性があります。
CR(コンポジットレジン)は自然の歯に近い色をした樹脂素材で、治療跡が目立ちにくく、前歯の虫歯などで歯を削った後を詰める治療でよく使います。
大きな虫歯には使いませんが、治療箇所が比較的小さい場合は歯を削った後、CR(コンポジットレジン)を充填し、光を当て硬化させることで治療が完了しますので、一般的には型を取る治療より早く終わります。なお、使用する部位によっては欠けてしまう事がありますが、再充填が可能です。
初診:12歳女児。以前に詰めたところが欠けてしまったと来院。
処置:CR(コンポジットレジン)を再充填しました。
お子様は医療費がかからないため、痛みや腫れの症状がないと来院されないケースがあります。症状が出た時には既に簡単な処置では対応できなくなる事もあり、次にご紹介する症例の様に歯の根を取るなど、お子様に大きな負担がかかってしまう場合があります。
乳歯の根は永久歯の生え変わりにとても重要な役割をしています。お子様が嫌がるなど様々な理由もあるとは思いますが、歯科医師による定期的な管理を受け、虫歯が出来ないようにし、虫歯が出来てしまっても早期に発見し大きくならないようにしましょう。お子様も、歯医者さんは痛くなってから行くよりも虫歯を作らないために行く場所と思った方が嫌がらずに楽しく通っていただけると思います。
初診:6歳男児。歯と歯の間に他院で白い詰め物がされていた。
処置:詰め物をした部分を定期的に見ることの必要性を説明しました。
その後、詰め物が取れ穴が空き来院。虫歯が大きくなってしまっていたので根の治療をし、金属の詰め物を入れました。
再度虫歯が大きくなってしまわないように定期的に来院する様にお願いするも1年来院されず、その後、同部位が腫れて来院し(痛みなし)腫れを取るため歯茎の消毒をしました。
次に紹介する2つの症例は、どちらも患者様がお痛みを訴えご来院になり、その痛みが取れると必要な治療があるにも関わらずその後ご来院頂けなかった症例です。
お口の中が不衛生な状態で治療が終わってしまっているため、歯や歯茎の健康状態は悪くなるばかりで、更に、痛みが出てからの治療は1回の治療が長引いたり費用も余計にかかってしまいます。
歯周病の原因になる歯石が付きだしたり、虫歯が出来たら痛くなるまで放置せず、早め早めに治療をする事がご自身にとって一番良い方法ですので、大変と思われても必要な治療は受けて頂く事が大切です。
初診:56歳女性。左下の奥歯に痛みがあり来院。
処置:痛みの出ている歯の根の治療を行い、新しく金属のかぶせ物を入れました。
治療が必要な歯が多すぎてご本人が希望されなかったので痛みを感じている歯のみ治療をしましたが、ご自身では取り除けないほどの歯石がついた歯や、治療途中で適切な処置がされていない歯が多くありました。このまま放っておくとまた次にどこかの歯が痛くなったり、歯周病で歯を失う可能性が高く、1回の治療が大きなもの(歯の根を取る、抜歯など)になる可能性が高く、時間も費用もかかってしまいます。
長くかかる治療と思われても、きちんと治療すれば必ず終わる時が来ますので、根気よく治療を続ける事をお勧めします。
初診:32歳女性。口が開きにくくなってしまう開口障害で痛みがあり来院。
処置:投薬治療を行い、口の開きが良くなりました。その後、再度痛みが出て再投薬しました。
開口障害でのご来院でしたが、写真の通り歯石が歯にびっちりと付いた状態でした。ご本人が希望されなかったので治療はいったん終わってしまいましたが、ここまで付いてしまった歯石は歯磨きだけでは取れません。また、下側だけに親知らずがあり、それが原因で噛み合わせに支障が出たり、再度痛みが出る場合があるため、痛みの原因をもっと詳しく調べたり、経過を観察する必要があります。
10歳女児、健診にて虫歯を確認。
処置:麻酔をして虫歯を綺麗に削り取り、白い詰め物(CR:コンポジットレジン)を入れました。
初診時(2月):8歳男児、虫歯があるかないかの確認で来院。
左下の奥歯(第1乳臼歯)はすでに虫歯になっており、他院にて白い詰め物(CR:コンポジットレジン)の治療済み。この詰め物は強い力に弱いため欠ける可能性があることを説明し、欠けたら金属の詰め物(インレー)を勧めました。
再診時(5月):健診で乳歯に虫歯ありと言われ来院。麻酔をして虫歯を削り、歯を綺麗に形成してから型を取り、後日インレーを入ました。
この症例のように、一度虫歯になった事のある歯は虫歯になる原因(磨き残ししやすい等)があり、再度虫歯になることが少なくありません。虫歯になった事のあるお子様は特に、大人が仕上げ磨きをして磨き残しが無いように心がけましょう。
初診:5歳男児。フッ素塗布を希望で来院。
処置:フッ素を塗る前に、普段の歯磨きの状態を染め出し液を使って確認してもらいました。
普段通りに歯を磨いた状態からさらに5分間子供自身で歯を磨いても、虫歯や歯周病の原因である汚れが歯と歯の隙間や歯と歯肉の間にまだ残っています。フッ素塗布の予防効果は高いと考えられていますが、毎日の歯磨きで汚れを取る事に勝る予防方法はありません。
お子様の歯を守るためには、子供の磨き方の癖や磨き辛い部分を把握し、大人による仕上げ磨きで磨き残しを減らすことが重要です。
Case1
初診:6歳臼歯(第1大臼歯)に放置された虫歯あり。
治療法:検査をし、歯を残すことが可能ならば麻酔をして増殖歯肉辞去(歯に穴が開いてしまった部分の歯肉の盛り上がりを除去すること)し、歯の神経を取る治療をご案内。
Case2
初診:右上の第1、第2乳臼歯に放置された虫歯あり。
治療法:歯を残すことが出来ないほど虫歯が進行していたので歯を抜く治療をご案内。
どちらの症例も治療法のご提案をしましたが、治療のご予約を取らずお帰りになりました。
ここまで大きな虫歯になってしまうと麻酔を必要とする治療となり、お子様への負担も増えてしまいます。
乳歯はいつか抜けますが、虫歯のまま放っておくと次に生えてくる永久歯に悪影響を及ぼしますので
虫歯にならないよう普段から心がけ、虫歯になってしまったら早めに治療するようにしましょう。
初診:下顎のブリッジが離脱した。
処置:同じブリッジの再設置は難しい旨をご説明。
下の歯は1本のみ保存可能で、型取りを行いました。
※その後、以前治療した医院に移られるとの電話があり、来院せず。